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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(84)

自己の探求

弟子たちに
伝道宣言をした仏陀釈尊は
それからひとりベナレスを出て
ウルヴェーラーのセーナー村へと歩まれた

途中静かな森で坐禅をし
自己を調えながら
法のなかに心を遊ばせていた

すると一人の青年が尋ねきて
仏陀に問いかけてきた

「あなたは一人の女を見かけませんでしたか」

そして今までのことを説明し始めた

「私たち三十人は王族の出身の青年ですが
今日めいめい若い妻を連れてこの森に遊びにきました
私たち三十人のうち一人は未婚で
そのため遊女を連れてきたのですが
私たちが遊びに興じている間に
その遊女が私たちのお金や宝石を盗んで逃げてしまったのです
そこでその女を追ってきたというわけです」

仏陀は静かに言う

「あなたはそのように
あわてて女を探しているようですが
その女を探すことと自分自身を尋ね探すことと
どちらが価値あることであると思いますか」

青年は少し考えながら言った

「今の状況では難しい質問ですが
あえて言えば自己を探し求めることのほうが
価値あることであると思います」

「それでは青年たちを集めてここに座りなさい
自己探求の教えを説いてあげよう」

青年たちは仏陀の悟りの力に心を染め
自らの心の内に
大いなる仏心の輝きがあることに目覚め
法眼を開いて
出家を請い願った