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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(107)

イラスト・山中一正

信仰が種である

あるバラモンが
マガダ国の南方にある村で
たくさんの土地を持ち耕して生活をしていた

ちょうど種まきのころ
多くの牛に鋤(すき)をつけて
田を耕していたところに仏陀が托鉢に立ち寄った

それを見たバラモンは布施もしないで
道の人よ
私は田を耕して種をまく
耕して種をまいた後で食事をいただく
あなたも耕せ 種をまけ
耕して種をまいたあとで食えと仏陀に言った

それを聞いた仏陀は
私も耕し種をまく
耕し種をまいたあとで食事をいただく
私はあなたが耕しているところを
今まで見たことがない
それなのに田を耕し種をまくというのですか

仏陀は静かに答えた
私にとって信仰が種である
修行し鍛錬することが雨である
悟り得た智慧が くびきと鋤(すき)である
反省が鋤の柄(え)であり 正念が鋤先ある
真理によって草を刈り
道を楽しむのが休息である
精進し努力することが耐える牛であり
そこから得るものは安楽であり安穏である
この耕作はこのようになされ
甘い多くの果実(みのり)をもたらしてくれる
この耕作を行ったら あらゆる苦悩から解き放たれる

バラモンは仏陀のこの言葉に
心の扉を開き帰依した
この物語はやがて仏典に記され長く伝えられていく