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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(108)

イラスト・山中一正

釈迦国の訪問

昔 仏陀が釈迦国の太子であったころ
出家を志し
従者チャンダカの弾く
白馬カンタカに乗って
真夜中にこっそりと城を出てから
どれだけの月日がたったであろう

チャンダカとの別れに
空の雲がいつかは離れ消えていくように
人の出会いもそうだといって
涙を流すチャンダカをいさめたのは
昨日のことのように思える

太子ゴータマがマガダ国で修行を重ね仏陀となり
国王のビンビサーラをはじめ
多くの人びとの帰依を受け
出家した弟子も多くなって
教団も大きくなっていった

そのうわさがやがて
釈迦国にまで聞こえ
ゴータマの父であり
釈迦国の王でもあるシュッドーダナは
仏陀が釈迦国に訪れて
教えを説いてくれるようにと思い始めた

王はウダーイーという者を使者にたて
仏陀に釈迦国へ来てくれるよう願った
ウダーイーは仏陀の教えを聞いて感激し
出家教団に入って自分の使命を忘れてしまった
後に王との約束を思いだし
仏陀にその王の願いを知らせたという

その懇請に仏陀は釈迦国を訪れることになるのだが
釈迦国の人びとは
自分が古い優れた家柄であると誇り
その自尊心の高さゆえか
若い仏陀を素直には受け入れようとはせず
また尊敬し礼拝しようともしなかった