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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(112)

イラスト・山中一正

貴賎を廃す―きせんをはいす―

仏陀は弟子たちに教えた
生まれによって賤しい人となるのでなく
生まれによって尊い人となるのでもない
行為によって賤しい人となり
行為によって尊い人となるのだ

当時のインドの社会は
カースト制といって生まれながらに
人の尊さが決められ差別があたりまえになっていた
仏陀は仏教教団の中には
その世俗的な階級差別を入れなかった

釈迦国で王族の出身である青年たちが
何人か出家した時のことである

理髪師のウパーリという男がいて
共に出家を願った
理髪師といえば奴隷階級で身分が低く
賤しい者とされていた

釈迦族の人たちは特に我(が)が強く
高慢であったこともあり
仏陀は青年たちよりも
奴隷であったウパーリを先に出家させた

出家して比丘(びく―坊さんのこと)となった場合
先に出家したものが教団内では先輩とみなされ
世俗の階級は無視された

ウパーリに理髪を命じていた王族の青年たちは
それ以来ウパーリを上位におき
先輩として接しなくてはならなくなった
今まで奴隷として使っていた者を
先輩として接しなくてはならい青年たちは
大いに心の修行になったであろう

このウパーリはよく修行をし
戒律の専門家として仏陀の十大弟子の一人となった
仏陀の亡き後には戒律を伝え
それが今日の戒律に関する仏典として残っていく