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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(115)

イラスト・山中一正

三明―さんみょう―

マガダ国のラージャガハで
仏陀は戸ごとに托鉢をしていた
あるバラモンの家に立たれた時
その家のバラモンは仏陀に言った

あなたが三明を具え
生まれが高くて博識であれば
私の食を布施しようと

ここでの三明は
バラモン教の聖典である三つのヴェーダをいい
生まれが高いというのは
生まれながらにしてバラモン階級が最高で
王族である仏陀は
低い階級を現わしていることを意味した

仏陀は
生まれや家柄で人の身分が確定しているのでなく
その人の日々の行いによって

人としての尊さがはかられるのだとした
また当時のバラモン教の三明は形式的に陥り
そこに書かれた文句を呪文のように唱えることが
功徳あるとされていた

そこで仏陀はそのバラモンに言うのであった
三つのヴェーダを意味も分からず唱え
心の内は清らかさと穏やかさを失い
日々煩悩に満ちた生活を送っていれば
真なるバラモンではない

三明とは
前世の生涯を見ることができ
天上と地獄の世界を見
煩悩に振り回されずに
正しく生きる知恵を持っていることだ
この三明を持っている聖者こそが真なるバラモンで
そのような者であるならば食をさしあげようと
あなたは言うべきであろう

この言葉を聞いたバラモンはその意味を深く悟り
仏陀に帰依して出家したという