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お釈迦様の生涯

伝道の日々(その2)

イラスト・山中一正

世間の恐怖

あるものが仏陀に尋ねた

世間は何によって覆われているのですか
世間は何によって輝かないのですか
世間を汚すものは何でしょう
そして 世間の大きな恐怖とは何でしょうか

仏陀はこの哲学的問いに
彼が学生ゆえに大らかに答えた

まず 世間は無明で覆われているのです
無明とは智慧(ちえ)のないことです
あたかもこの世は暗やみを行くがごとしで
正しく生きるための法(おしえ)の灯火がなければ
この世の道を歩いていっても
どう生きていったらよいのか分からないので
大きな石(問題)につまずき倒れ傷つくのです

世間は貪(むさぼ)りと怠惰(たいだ)で
輝かないのです
貪りは相手の財や思いやりの心を奪い取り
怠惰は努力を蔑(ないがしろ)にする思いです
努力をしないで 相手の財や優しさを奪い取れば
この世はいながらにして暗い地獄の世界と化すのです

世間を汚すものは欲心(よくしん)です
生きていくための欲は大切なのですが
常に相手を傷つけ悲しませる欲の心は
自らの心も汚し 決して幸せは得られないでしょう

世間の大きな恐怖は苦悩です
苦しみ悩むことは人としての大きな恐怖です
生まれる苦しみ 老いの苦しみ 病の苦しみ
死の苦しみ そして愛する人との別れの苦しみや
嫌いな人と共に生きなくてはならない苦しみ
自分の思うようにならない苦しみなど
この世は苦悩に満ちています
これが世間の恐怖なのです

ゆえに智慧を得 勤勉で分かち合い 足ることを知って
教えに従って
苦しみを乗り越えていくのです