お釈迦様の生涯
伝道の日々(その4)
すぐれた一日
ある老人が尋ねた
私は長い間 真理も知らず
徳という行いもせずに
心乱れ 愚かな日々を送ってきました
でも最近やっと仏陀に巡り会え
真理(正しい教え)を知り その真理に従って
生きることができるようになりました
今 私の寿命が尽きようとしています
少ない徳行であった私は きっと愚かな人生ゆえに
悔いの残る最後を迎えるのではないでしょか
仏陀は答えて言った
益のない言葉を千たび語りあるいは聞くよりも
心の静まる正しい真理の言葉を一つ聞くほうが
すぐれているのです
どうでもよい言葉を百回唱え聞くよりも
心静まる詩を一つ読み聞いたほうがすぐれているのです
日々の行いが悪く
それゆえ心乱れて百年生きるよりも
徳を重んじ その徳を行って
静かな心を保つ一日のほうがすぐれているのです
人の道を知らず 心乱れ
愚かな日々を送りながら百年生きるよりも
人としての智慧をもち生きる一日のほうが
すぐれているのです
働こうともしないでなまけて百年生きるよりも
常に働くことを惜しまず
人のために一生懸命働いて一日生きるほうが
すぐれているのです
仏陀の説く最上の真理をみないで百年生きるよりも
最も過ぐれた仏陀の説く真理を見て一日生きるほうが
すぐれているのです
それを聞いた老人は あふれる涙をふきもしないで
仏陀に巡り会えた喜びに身を震わせるのであった