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法華経の詩

法華経の詩(38)

信解品 第四(4)

世尊なる仏に
仏弟子たちは続けて語った

仏よ かの貧乏な男をとき放った長者は
男が自分の息子であることを
誰にも明かさないで
巧妙な手段としての方便を用い
顔色の悪い二人の男を雇って言いました

「お前たちはここに来ていた男を探し出し
お前たちが雇うことにして 二倍の日当を与え
私の家で一緒に 汲み取りをさせなさい」と

さっそく二人の男は
貧乏なその男を探し出し
長者から手当てをもらって 言われた仕事を始め
貧乏な男は 長者の家の近くの
藁(わら)ぶきの家に住んだのです
そこで長者は
自分のつけていた豪華で柔らかな服を脱ぎ
汚れた衣服をまとい
右手に汲み取り用の籠(かご)を持ち
自分の手足を泥でよごして
息子に近づいて話しかけたのです

「おい下男 ここで働くがよい
決して他所(よそ)に行ってはいけない
おまえが欲しいと思うものは何でお前にやろう
心配するな
私を お前の父親だと思うがよい
お前はまだ若い
それにお前は汲み取りをして 私に尽くしてくれた
お前の仕事を見ていると
不正もしないし 不誠実なところもない
傲慢(ごうまん)なところもないし
猫(ねこ)かぶりのところもない
今日からお前は 私の実の子と同じだ」

やがて 貧乏な男も
長者に父親の印象をもつようになり
それから二十年という歳月が流れていったのです