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みにミニ法話

(200)「生き抜く力」

生き抜く力といえば、
困難にもめげずに、頑張って生きるというイメージが感じ取られます。

一人の力で前へ突き進むといった感じもありますが、
この生き抜く力の中には、一人の力でなく、多くの支えがあって、
生かされているという面も忘れてはならないと思います。

紙に表と裏があるように、
表が自分の力で力強く生きるということであれば、
裏の面が、多くの人に生かされているということです。
その両者があって、紙になり、あるいは「生き抜く力」になるわけです。

今話題になっているピアニストで、辻井伸行さんがいます。

第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで優勝した、
当時は若干、20才のピアニストです。

小さいころから目が見えず、それでも音楽の道に入り、
その天才ぶりを世に知らしめました。

審査員であるヴァン・クライバーン氏は
「奇跡としか言いようがない。
彼の演奏は神聖な癒しの力を持っている。まさに神のみ業だ」
と言っています。

本人は目が見えないからすごいというのでなく、
演奏そのものを聞いて、みんなが癒され楽しんでくれれば、
という思いであるようです。

目が見えたなら何が一番見たいという質問に
「両親の顔が見たい」と答えたのは、日ごろ目が見える私にとっては、
重い言葉として受け止めさせていただきました。

目が見えないということは楽譜が見えないことです。
ですから、一曲演奏するには、多くの努力が必要であったでしょう。
力強い生き方を思います。

そしてもう一つ、こんな力強い生き方をする陰には、
やはり両親や、まわりの人達の支えがあったからでしょう。
支えてもらえなければ果しえない偉業です。

生き抜くためには、自分の力も必要ですが、
支えてくださる方々の力もとても大切になります。

そして、そんな支えを頂けるために、
謙虚さと真摯な努力をいつも忘れないことだと、
一人のピアニストに教えていただくのです。