しきたり雑考(41)
赤飯
今月は「赤飯」(せきはん)についてお話し致します。
一般に赤飯は祝い事の時に出されます。
古くは鎌倉時代から宮中なので出されていたようです。
今では出産祝いのお返しとして、赤飯を重箱に詰めて配ったりしています。
この赤飯の赤い色は魔除けの力があるとされ、
祝いの時に、魔という不幸がこないようにという願いもあったと考えられます。
こんな祝い事に使うこの赤飯が、ご葬儀の時に出されるところもあります。
民俗研究者の真野純子さんが新潟の上越市で調査した結果が
ある本に載っていました。
そこには赤飯が4つの場面で見られると書いています。
まずお葬式の当日、
赤飯と枕団子が亡くなられた家(喪家)に届けられるといいます。
ふだんの赤飯とは異なりゴマ塩を使わないようです。
次に野辺送りの後、赤飯が出され、
棺(ひつぎ)を背負う人たちにも、この赤飯が振る舞われるようです。
また火葬場では白い三角おにぎりと、赤飯のおにぎりを用意するのです。
お葬式の時の赤飯は、祝い事の赤飯と違い、
赤い色を薄くしているのが特徴のようです。
火葬場で出す白い三角のおにぎりは、赤飯に違和感を感じる人が出て来たので、
後にこの白い三角おにぎりが出てきたようです。
私自身もある葬儀で、三角のおにぎりを出されたことがありますが、
昔は赤飯のおにぎりであったようです。
ご葬儀の時、何故赤飯なのか、です。
民俗学者であった柳田國男の説明です。
葬儀のときなどの物忌み、すなわち不吉でおそれきらう出来事に入る時に、
潔斎(けっさい)と言って、肉などを食べないで慎み深い生活をします。
やがて、その物忌みが終わり、普通の生活に戻ります。
それぞれのくぎりの重要さを印象づけるために、
赤飯の赤が使われたと説明しています。
人が亡くなるとき物忌みに入り、
その物忌みに入るという意識を確認させるために赤飯を食べ、
四十九日が終わった時に、物忌みが明けたという意味で、赤飯をいただく。
そんな意味でとらえているようです。
不幸と幸せの区切りをはっきりさせるために、この赤飯をいただくということです。