しきたり雑考(97)
川に引き込む河童
今月は「川に引き込む河童」についてお話しします。
{『現代民話考1 河童・天狗・神隠し』 松谷みよ子著 立風書房を参考}
川に引き込まれるというのは、よく分かります。
私が保育園に行っていたころです。
友達と遊んでいて近くの川に来たとき、
ちょうど水が渦巻く深いところがあって、
何故かその中に飛び込みたくなったのです。
気がついたら、
その川の近くのおじさんの家の布団のなかでした。
おじさんが助けてくれたようです。
今まで川に引き込まれるのは、
自分の意志のように感じていましたが、
いろいろ調べている内に、河童か、
何か、えたいの知れない「モノ」の仕業であると思うようになりました。
よく台風や大雨が来て、川に行ってはいけない。そんな話を聞きます。
興味本心で、荒れ狂う日に川に行けば、
えたいの知れない「モノ」に川の中に引き込まれるのです。
参考にしているこの本の中にも、
河童に川の中に引き込まれる事がでています。
長野県南佐久郡での話。
カッパという話をよくするけど、
この村でも、ここだというところが一か所あった。
そこにはちょっとした盛り土があって、
そこにある池には青ゴケが生えていて、
中をすかしても見えないところだった。
そこに
「カッパがいるんだ。子供が行くと、引き込まれるから、行っちゃあいけない」
というようなところ。そこへは人を寄せ付けないようにした。
カッパは、子どもを水の中に引き込んで、
腹ばたを抜くっていうことなんだが。
今より40年ばかり前のこと。
今は田んぼにして、水田になってしまったけど。
高知県幡多郡での話。
4年生になる孫娘が、舟に乗らず一人で泳いで川を渡りよった。
急にその子が「じいしゃん、早よ、早よ、助けて」と大声でさけぶ。
舟をまわして、孫娘を舟へひっぱりあげた。
孫娘は
「おそろしかった。川の中に黒い岩のようなものがあって、
そこに足をかけると、私の足を引っ張るけん。死ぬところだった」
海に流され、お経を唱えたら救われたという例もあるので、
お経を覚えておくとよいかも。