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扉の詩

(305)「涙が止まらない」

数年前の春
お世話になった方が
ガンで亡くなった
今でも思い出す

初めてのお見舞い
どうお会いしたら
よいのかと
一生けん命考え
身構えていた

自分の命に
見切りをつけた人
涙は出すまいと
ドアをノックした
部屋を入るなり

「ありがとう
もう歩けないの
お茶を替えてくれる」

死を目前にしても
笑顔で気配りをし
ちゃんとした態度に
緊張がほぐれ
涙の出ない
普通の訪問だった

しかし その帰り道
温かいものが
心にこみあげ
涙が止まらなくなった
間もなく亡くなる方から
私の方が
生きる力を
いただいたのだ

(平成16年3月30日付 読売新聞 女性の投書を詩にする。)