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法華経の詩

法華経の詩(128)

従地涌出品 第十六(5)

仏 世尊は
今度は喩えを示して語った

ここに見識の深い手腕のすぐれた
医者がいたとする
その医者には多くの子どもがいた

その医者が用事で外国に出かけた
父の留守中に
子どもたちがみな毒物にあてられた
彼らは毒物のために
非常に苦しみ
幾人かは意識が転倒し
正しい判断ができなくなった

そこへ 医者である父が帰ってきて言った
このよく効く薬を飲めば
毒が消されて楽になり 病気が治る
そう語ると
意識の転倒していない子は
その薬を飲んで苦しみから解放された
しかし転倒している子は
この薬を飲もうとしない

そこで医師である父は
巧妙な手段をもちいて
  転倒する子に語った

私は年をとってしまった
老衰して死期がせまっている
また私は他国に出かけなくてはならない
この薬はよく効く薬だ
飲みたいと思ったら 飲みなさい

そう言い残し 他国へ出かけ
そこで父は 子たちに死を告げた
子どもたちはそれを聞き悲しみ 
薬を飲んで 苦しみから解放された
後に この喩えは
「良医(ろうい)のたとえ」
として 言い伝えられていく