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法話

みんな何かを教えている 4 「自然に学ぶ」

自然との出会い

私の詩の中には、自然から学びとった詩が多くあります。

秋の渋柿から学んだことを以前、「法愛」(平成14年10月)の表紙に載せたことがありました。「自己変革」という詩です。

自己変革

秋の空に赤く熟した柿が
大きく揺れた

最初は渋柿であったのに
いまは甘い香を放って
ほほえんでいる

何日も焦ることなく
甘くなろうと努力し
自己変革をしたから
あの熟したお前があるのだ

自己変革
私にもできそうだ

かたくなな私から
甘い香を放った
自分になることを決意する
慈しみの人となろう
愛深い人となろう

青い渋柿が何日もお天道様の光に照らされて、しだいに熟していく。そんな様子を誰しも感慨深く見つめるものです。 その様子を見て、詩を作る人あり、人生の糧を見つける人あり、自然のゆっくり進む有り様に心癒されることもありましょう。 すべて渋柿との出会いから、人生の発見をしているのです。

自然の中に人生の教訓を引き出す

特に自然から多くの人生のヒントを導き出したもので、イソップ童話は優れたものがあります。 紀元前6世紀ごろ、ギリシャの人が作ったものといわれています。ざっと数えて2500年前になりましょう。 それなのにその物語は新鮮さを失っていません。それも自然を題材にしているからで、その自然自体変わっていないからだと思います。
「北風と太陽」は有名です。

 北風が太陽に向かって、
「私の力はすごいだろう。みんな私を恐れている」

そこへマントをつけた男が歩いて来た。

そこで太陽が言った。
「それなら私と力くらべをしよう。あの男のマントを脱がしたほうが勝ちにしよう」

北風は自信まんまんに、強く吹いて男のマントを飛ばそうとしました。しかし男は風に飛ばされないようにと、さらにマントを身体に巻きつけます。

次は太陽の番です。太陽は暖かくぽかぽかと男を照りつけました。男はしだいに気持ちよくなり、暑さを覚えて、しまいにはマントを脱いでしまいました。

こんな物語です。北風と太陽の力くらべから、人生の教訓を語っているわけです。 人に接するとき、強引に相手を導こうとしても無理で、あたたかく思いやって接していると、必ず心を動かしてくれる、と解釈できます。 北風が吹く季節ですから、寒い辛い季節です。それから察すると、人が苦労しているときの、人への接し方を言っているといえましょう。 自分が辛いとき、あたたかく接してくれれば、嬉しいものです。自然には多くの学びが眠っているのです。

京都にある大徳寺というお寺を開いた大燈国師(だいとうこくし)というお坊さんが、こんな歌を残しています。

雨あられ 雪や氷と隔(へだ)つれど とければ同じ谷川の水

雨もあられも雪も氷もみな違った顔をしているが、解けてしまえばみな谷川の水になり、もとはみな同じものだという歌です。 この中に隠されているものは、人はみな違った顔かたちをしているが、心のなかを眺めると、みな同じように尊い仏の心を持っているのだ、ということになります。 このように、仏教的な価値観を自然の中に歌ったものは多く残されています。みな尊い出会いからの人生の発見です。