法話
遠い世界からのメッセージ 4 「神仏からのメッセージ」
生きるエネルギー
生きる力となる真理の言葉は、ずっと消えないで、私たちを支えて行く力を秘めています。
投書の女性は現在78才で51年前に3才の子から勇気の言葉をいただいたので、計算すれば、この出来事は彼女が27才のときのことです。
それから51年の間、ずっと彼女を支え続けてきました。51年前に食べたうどんの味は覚えていないかもしれませんが、この子どもの言葉は忘れないでいます。
真理というのは、砂で作った城のようにたやすく崩れもしないし、消えもしないで、いつまでも私たちを支え続けていくのです。
真理の言葉のなかにはエネルギーに似たものがあり、その生きるエネルギーの力が、その真理を発見し見つけ出した人の心に入っていって、強く歩む力に転化していくわけです。
過去に現れた賢者や立派な人びとの教えの言葉は、今もその力を失わないでいます。
このお話のシリーズのなかで出て来た賢者に、セネカがいました。法然や空也、ゴッホもいました。
それらの方々の言葉を学びましたが、その言葉のなかに、生きるエネルギーが満ちているわけです。
それらのエネルギーはどこからくるのでしょう。
いつまでも消えず力があって、私たちの生きる支えとなる真理、それは偶然にあるものなのでしょうか。
仏教徒であれば、かつてこの世に生を宿し、尊い法を説かれた仏陀釈尊から放たれていると考えます。
お釈迦さまは今も天上の世界にあって、その世界から真理を投げかけてくれています。太陽の光りのようにです。
それは遠い遠い仏土(ぶっど・理想の世界の意味)から放たれている光かもしれません。
その真理を日々のなかで発見しようと思えば見つけることができるものですし、それを努力して自分のものにし、自分の生き方にすれば、幸せな生き方ができるのです。
そして、その積み重ねが多くの体験を生みだし、人格を築きあげていくのです。
努力とマイナスの代価
人として生きる大切な法則に、努力の対価があります。努力すればそれだけの何かを得られるという法則です。
逆に努力もしないで日々を怠慢に送っていれば、それだけのマイナスの対価を得ることになります。
昔息子が中学生であったころ、驚くほどゼロに近い点数を持って帰ってきたことがありました。確か社会のテストであったと思います。
テストをし、その結果を見て反省し、それで終われば息子にとって楽なことでした。
でも先生がそのテストに関する宿題を出したのです。テストの間違った箇所を全部正しい答えにして返す宿題でした。
しかも問題も全部書かなくてはならないという指示だったのです。
社会ですからその問題も非常に長く、息子の青ざめた顔が可哀想にも思えました。
95点の人は5点分直せば宿題は終わりです。しかし息子の宿題は厖大なものでした。
これと同じようなことが人生にもいえます。
しっかり真理を見つめて発見し、それをもとに自助努力して生きぬいてきた人生は、それなりのテスト結果を得ることでしょう。
でも真理を見ることなく、いい加減な生き方をした人は、低いテスト結果をいただいて、その修正に厖大な時間を使わなくてはならないのです。
お釈迦さまはいいます。
悪人は地獄におもむき、善人は天上に生まれる。
(『真理のことば 感興のことば』中村元訳)
善人は常に真理に関心をよせ、どう生きればよいかを問い尋ね、正しく生きた人のことをいいます。
悪人は真理に反した生き方をし、またその真理を学ぼうともせず、自堕落な生活を送った人をいいます。
この善悪の一線をどこで決めるかは「仏のみぞ知る」世界なので、凡人の私にはこの程度までしかお話しすることはできません。
ただ言えることは、この世という試験場でテストの点数が低ければ、合格点を得るまで地獄という場で修行をしなくてはならないし、 この世で合格点を取れば、死んで後、天上に生まれて、さらに次の新しい学びができるということになるわけです。それは喜びそのものといってもいいでしょう。
この真実を信じ、今を大切に生きることです。
また、大いなる存在である神仏は、ただ単に人びとをこの世に送ったのではありません。
この世は無法地帯ではなく、あらゆるところに神仏は「気づきの場」をお与えくださっていて、それを発見しながら前へ進んでいけば、
必ず合格点をいただけて、たくさんの心の収穫を得、大きな幸せを得ることができるのです。
法然上人の歌のなかに「月影のいたらぬ里はなけれども」とありました。
「月影」は神仏の真理の光です。「里」はこの世です。真理の光はこの世をくまなく照らしているのです。
そのようにこの世を神仏はお創りになって、私たちを常に見守っているのです。
神仏の眼差しは遠い世界からではあるのですが、今現在も正しく生きるための多くのメッセージを休むことなく投げかけていらっしゃいます。
このことを信じ、平凡な生活のなかに、そのメッセージを探しながら、強く歩んでいきましょう。