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法話

心の食事と良き人生 2 「肉体と戒体」

肉体という体

この肉体を健康に維持していくためには、バランスの取れた食事をしたり、運動をしたり、普段からストレスをためないような生活が必要になります。

さらには、自分自身が普段から気をつけ、病気にならないような精神的安定感を保つことも必要でしょう。

日本では一人のお医者さんが診察をする患者さんの数が、欧米の国々と比べて、非常に多いといわれています。

アメリカやフランス、イギリスに比べて3倍から4倍ほどあるようです。それに比べ、お医者さんに払うお金は、非常に安いのです。

アメリカの医療費は日本の8倍ほどあります。日本で1千円かかれば、アメリカでは8千円になります。こんなに高ければ、お医者さんに行かずに、自分でなんとかしようと思います。

医療費が安いことはよいことでしょうが、安いことをあたりまえと考え、医療費が少し上がれば国を責めるという行動は、自分の心に不満を増大させ、返ってその思いが自分を不幸にする原因になりかねません。

大切なことは、自分自身で普段から気をつけて、健康を保つ生き方をすることです。

健康な心の体

仏教では、肉体のほかに戒体(かいたい)という体を教えています。戒は戒(いまし)めですから、自分が戒めをもって生きていると、その戒めにあった心の体ができるのです。

このお話に関連していえば、戒体は「健康な心の体」といってもいいかもしれません。

人の心はさまざまなことで揺れます。揺れて判断を誤り、悪を犯すことも多々あります。戒体はそういう心の揺れを抑え、堅固にするのです。

たとえば昔こんな事件がありました。ある地方の町に起こった事件です。

ある町の道端に野菜の無人売り場がありました。

ある男がそこにやってきて、
1本100円の大根を、300円だけ料金箱に入れて、5本持って帰りました。

午後千円をくずして不足の200円を払おうと現場に足を運ぶと、
売り主の農家のご婦人が「おめだべ、おれの大根を持っていたのは」と
とがめたのです。

男はとっさに「おれでね」といって車で走り去りました。

その車のナンバーを控えられ、男の正体がばれてしまったのです。

その男は何を思ったか、もう一度、その売り場にもどって
残りの200円を支払ったそうですが、すでに遅かったのです。

男は町の農林課長(54才)でした。

「役場の職員が大根を盗んだ」という噂があっという間に広まり、
その課長は停職40日という罰を受けるはめになりました。

とっさのとき、人は心が揺れて、正しい判断ができなくなることがあります。

そして罪を深くしてしまうのです。戒体ができていなと、このようになるのです。

(つづく)