ホーム > 法愛 3月号 > 法話

法話

念じる力を知る 1 自分も相手をも変える念

念の力とは

念(ねん)というのは、深く思うこと、考えることです。
深く思い考えて、何かを成し遂げようとすることです。

この念には非常に力があって、念によって自分自身を変えることもできますし、相手にも大きな影響を及ぼしていく力にもなります。

たとえば母が子を助けるときにも、そんな念が働くと思われます。

最近地震が多く発生していますが、
今から7年ほど前にもイランで大きな地震がありました。

地震が発生した2日後、生後6か月の女の子が、 すでに死亡したお母さんの腕に抱かれた状態で、がれきの下から無事救出されました。
この女の子はナジームという名で、そのとき手当をした医師によると、容態は良好であったということです。

これは偶然だと思えばそうでしょうが、
「念の力は岩をも徹す」ということわざのように、母親の我が子を守るという強い念があって、助かった可能性も否定できないと思います。

我が子を抱きしめて、この子だけは助かってほしいという思いと、
母親自身が亡くなって後にも、この子を誰かに見つけてほしいという念が生きていて、
その思いが救出の助けになったとも考えられます。

これと同じような事が阪神淡路大震災の時にも起こりました。

平成7年の1月17日の朝のことです。
私の住む信州でも、ずいぶん揺れたのを覚えています。

この地震で多くの人が亡くなりましたが、
広瀬めぐみさんのおばあさんもその一人でした。
(詳しい話は拙著『精いっぱいいきよう そして あの世も信じよう』の42ページに載っています)

地震が起きた朝、ものすごい揺れを感じ、
おばあさんと寝ていた当時中学3年生であっためぐみさんは、
おばあさんの叫び声で目を覚ましました。

そしておばあさんがめぐみさんをかばうように覆いかぶさり、
めぐみさんを助けようとしました。

このとき家が潰されてしまったのか詳しい状態は分かりませんが、
おばあさんが「めぐ、めぐ」と何度も呼び、そのうち声がしなくなって、
助けられたときには、おばあさんは亡くなっていたそうです。

孫のめぐみさんを一生懸命守ろうとしたその強い思い、念が働いたと思われます。
その念を受けて、めぐみさんは助かり、足を切断しなくてはならないと医師に言われたのですが、 幸い足も完治して、今は介護福祉の仕事をされているようです。

人を守ろうとする念の力は、必ずあると思われます。

貧しくていいなら貧しくなる

これは特異な事件だと思いますが、
もっと私たちの生活に密着した念について考えてみます。

たとえば貧しさと豊かさについてですが、
「貧しくていい」と思って生きている人は貧しくなりますし、
「富栄えたい」と思って暮らしている人は、そのようになっていくということです。

この考えは今「引き寄せの法則」といってずいぶん本がでていますが、
特にジョセフ・マーフィーという人が有名で、潜在意識を活用して、成功をしていくことを語っています。

貧しさの念が貧しさを引きよせ、
富を大切にする念が、富を引きよせるということです。

「富が豊かに流れ込んでくるという認識を心にあふれさせる」
という意味のことをマーフィー博士は語っています。

これは、思うことだけ、その思うことが実現していくということです。

今年はいい年になると思っている人は、そのような年になっていきますし、
逆に今年は悪い年になりそうだと強く思っていると、悪い年になりやすいのです。

こんな会社は嫌だなあと思っていると、その会社を辞めていく確率は高くなります。
給料だけもらっていればいいと思って仕事をしていれば、
立派な仕事はできないでしょう。

この会社でしっかりやっていくと念じていれば、
同じ仕事でも成果のあがる仕事ができるようになると思います。

病気などでも、咳を4回すると風邪になるという迷信を信じていれば、風邪になりましょうし、 そんなことはないと思っている人は、風邪にはならないのです。

今私の職業はお坊さんですが、この職業がまったく嫌だと強く思っていれば、
こうして『法愛』も書いていないでしょう。

でも、心のなかでいつかはやってもいい職業だという思いが少しあったので、
父が急逝しても、なんとかこの職について頑張ることができたのだと思っています。

今は出来るならば「立派な宗教家になりたい」と強く念じています。
なかなかその道のりは遠いものがありますが、いいかげんにやるよりも良いと思っています。

人格を変える念

さらに言えば、この念が人格まで変えてしまうこともあります。

欲深な思いをずっと思っていて、それを野放しにしいると、欲深な人間になっていきます。
情欲をほしいままにしていると、そんな人間になっていきます。

感謝の念を忘れず、この思いは大切だから、感謝の思いを常に抱いて生きようという人は、穏やかな人に変わっていくのです。

強く思うことが、やがて形になって現れてくることを知っていることが大切です。