ことわざ雑考(25)
能なし能一つ
今月のことわざは「能なし能一つ」です。
{『ことわざ・名言辞典』(創元社)を参考}
意味は、
「何にも才能のないような人でも、一つは才能を持っているものである」
です。
ごく普通の人であれば、
私もそうですが、特別な才能などないと思います。
暮らしになんとか困らないように生きていく。
それが才能であれば、一つの才能かもしれません。
自分は足りないところばかりで、才能にはほど遠いと思っている人も、
こんな話を聞くと、自分で気がついていない才能を持っているとも考えられるのです。
インドに、次のようなお話があるそうです。
ある水汲みの男性が、
一本の竿に、水汲み用の水がめを左右に一つずつぶら下げて、
川から水を運んでいました。
遠く離れた高い丘にある家まで水を運ぶという仕事をしていたのです。
しかし、左の水がめはひび割れていて、
運び終わったあとは、いつも水が半分に減っていたのです。
あるとき、それに気づいた左側の水がめは、
「ひび割れた私のせいで、水が半分しか残らない。
右側の水がめは水いっぱいなのに。私は役立たずです」
と男に謝ったのです。
すると男は、
「見てごらん。道のどちら側に花が咲いているだろうか」
と左の水がめに尋ねました。
よく見ると、
ひび割れた水がめが通った左側だけに、花が咲いているのです。
それを見たとき、ひび割れた水がめは、
「役目を果たさない能無しの私だと思っていたのに、
花を咲かすことができた」
と思い、自分をいとおしく思ったのです。
黙ってこの様子を見ていた右側の水がめは、
「自分は満杯の水を運ぶことができるから、完全だと思っていたけれど、
花を咲かせないというひび割れを持っていたのだ」
こんなお話です。
自分がひび割れているという欠点を持っていて、
役立たずで、能無しと思っていたその欠点が、
役立つ仕事をしていたということです。
何もできないと思っていたのに、相手に笑顔ができる。
「ありがとう」がいえる。明るく挨拶ができる。
困っている人を見ると、何とかしてあげたい。
みな、人としての才能なのだと思います。
自分はどんな才能を持っているのかと、
自分の生き方を少し探ってみてください。
