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ことわざ雑考(11)

財を以て交わる者は 財尽きて交わり絶ゆ

今月のことわざは「財を以て交わる者は 財尽きて交わり絶ゆ」です。
「ことわざ・名言辞典」(創元社)

このことわざは、財宝があるからと交際している人は、
その財宝が尽きた時、交際が絶えてしまうという意味です。

ある人が宝くじに当たって、大金を得た。
それを知った親戚や知人が、そのお金目当てにすりよってくる。
そんな話をよく聞きます。

このことわざで思い出すのは、芥川龍之介が書いた「杜子春」という小説です。
短編ではありますが、人の生き方をよくとらえていると思います。こんなお話です。

若くて貧しい杜子春がある門の下で立っていると、
ひとりの老人がやってきて、何故か黄金のありかを教えるのです。

大金を手にした杜子春は、友達をよんで、お金を使いまくります。
やがてそのお金がなくなると、今まで親切にしてくれていた友だちが去っていくのです。

もう一度老人が杜子春に大金のありかを教えます。
同じように友をよんで、お金を使うのです。
そしてなくなると同じように友は愛情もなく去っていきます。

その老人に再び会った杜子春は、
老人が仙人であることを見抜き、弟子にしてくださいと頼みます。

それならば、「これから何があっても、声を出してはならない」と言って、
峨眉山(がびざん)という山に連れていきます。

そこでさまざまな魔性の者がでてきますが、一切声を出さないのです。

(少し物語を飛ばします)

地獄に堕ちた杜子春のところへ、閻魔大王が杜子春の両親連れて来て、
彼の前で、鬼たちに「打て。肉も骨もさいてしまえ」といい、
両親をめったうちにするのです。

母は
「私たちはどうなってもいい。
 お前さへ幸せになれるのなら、言いたくないことは黙っておいで」
と言います。

すると何があっても声を出さなかった杜子春が
「お母さん!」と一声、叫んだのです。

その声を発したとたん、元に世界のもどり、
目の前に現れた仙人が「とても、仙人にはなれないだろう」と言います。
杜子春は「なれません。これからは人間らしい、正直な暮しをします」と答えます。

そして仙人は、一軒の家を与えます。

お金も大事ですが、正直な人間らしい生き方が優れているのです。
そこに人としての、本当の財を得ることができましょう。

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