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ことわざ雑考(13)

水魚の交わり

今月は「水魚の交わり」についてお話しします。
{『ことわざ・名言辞典』(創元社)を参考}

このことわざの意味は、魚は水を離れて生きられないように、
「切っても切れない関係」のことをいいます。
あるいは、「たいへん仲良くつきあうこと」のたとえです。

同じようなことわざに「水魚の親(しん)」とか
「水魚の契(ちぎ)り」があります。

これらは人と人との関係で言われることですが、
別の角度から考えてみます。魚は水がなければ死んでしまいます。
人も空気がなければ死んでしまうし、水がなければ生きていけません。

外の寒さの中では、あたたかな服がなければ凍死する確率は高く、
夏の暑い日はクーラーなしでは、熱中症になって、身体が持ちません。
そう考えると人間は弱いものです。

しかし、人間は考える力があるので、
どう生きていけば安全で、快適に暮らせるかを考え工夫し、
さまざまな物を発明し、よりよい暮しを求めてきました。

この考えることには、暮しばかりでなく、
文学的創作をも深め、文化を発展させてきました。

次の詩は金子みすゞさんの詩です。「まゆとはか」という詩です。

「まゆとはか」

かいこは まゆにはいります、
  きゅうくつそうな あのまゆに。
けれどかいこは うれしかろ、
ちょうちょになって 飛べるのよ。
人はおはかへ はいります、
暗いさみしい あのはかへ。
そしていい子は はねがはへ、
天使になって とべるのよ。

こんな詩です。

亡くなって、いい子は天使になり、ちょうちょのように飛べる、
というのは、仏教的には成仏して浄土に舞い上がっていける
ということです。

そのために、「いいこ」として、
この世で生きていくのが大切な条件になります。

この条件を満たさなければ、
魚は水がなければ生きていけないように、
人として生きていけなくなるのです。

この「いいこ」になるために必要な生き方は、
素直さ、慈しみ、愛や感謝など、目に見えない思いです。
この思いは人として生きていくために、欠かせない考え方なのです。
それを失ったとき、人は争いを始め、互いが傷つけあい幸せを失うのです。

こんな尊い思いと常に交わりながら生きていくことが、
このことわざから考えられるもう一つの見方といえます。

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