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ことわざ雑考(14)

性、相近し 習えば 相遠し

今月は「性、相近し 習えば 相遠し」についてお話しします。
{『ことわざ・名言辞典』(創元社)を参考}

この名言辞典の説明は
「人間の性質は、生まれた時はあまり差はないが、
 その後の習慣によって大いに差を生じるものである、という意味」
となっています。

この辞典でも書いているように、
これは孔子の論語(巻第九・陽貨十七の二)に出てくる言葉です。
論語が日本のことわざになるくらいですから、
広くこの論語が読まれていたことが推測できます。

私の持っている岩波の論語では金谷治氏が
「先生がいわれた。
 生まれつきは似(にか)よっているが、しつけ(習慣や教養)でへだたる。」
と訳しています。

生まれたときは、みな可愛らしい赤ちゃんですが、
成長するにしたがって、生まれた家族の構成、
たとえば、兄弟がいたり、両親が仲良かったり、険悪であったり、
どちらかの親が早く亡くなったり、別れたりで、
ずいぶん人生観も変わってきます。

学校や会社においての学びや人間関係からも影響を受け、
勤勉であるか、そうでないかでも、人格の深まりが異なってきます。

論語から少し学んでみます。
孔子は「四つのことを断たれた」と子罕(しかん)第九で語っています。

そこには、 「子、四を断)つ。意なく、必なく、固なく、我なし」
とあり、金谷氏の訳は
「先生は四つのことを断たれた。
 勝手な心を持たず、無理おしをせず、執着をせず、我を張らない」
です。

この四つのことを人の道として実践していけば、
晩年、深みのある人に成長していけるということです。

「勝手な心を持たず」は、
自分勝手で人の気持ちを考えないような生き方をしないということです。

「無理おしをせず」は、
よく考えもしないで無理やりことを押し進めるようなことはしない、です。

「執着をせず」は、禅でもよく言われることです。
お金や地位にとらわれない。
妻はこうあらねばならないとか、夫はこうあるべきだという
固定観念に縛られない、などなど。

「我を張らない」はよく分かります。
我欲が相手との調和を乱し、言い争いになったり、
喧嘩別れになったりし、後で損を見るのです。

人としての道を歩み、人格をどこまでも深めていく。
そんな生き方を、このことわざから教えていただけます。

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