ことわざ雑考(16)
大恩は報ぜず
今月は「大恩は報ぜず」についてお話しします。
{『ことわざ・名言辞典』(創元社)を参考}
このことわざは
「人はあまりに広大無辺な恩義には、かえって気づかないから、
その恩に報いようとはしない」
という意味です。
恩を感じ取るのは難しいことで、
小さなことでも気づかないことが多いものです。
あたりまえ病という、病があるかどうかは知りませんが、
してもらってあたりまえという思いが出てしまうことがあります。
してもらっていると知っているのはまだいいほうで、
それさえ気づかないときもあるかもしれません。
日々の食事で、手を合わせ感謝していただくのは、
食べ物の恩に報いる姿です。
ですから、恩に気づくためには、
感謝の心を育てていく必要があります。
眼病で、目が不自由になり、今まで生活ができなくなった人がいて、
そのことを不満に思うのではなく、大切なものに気づいた人がいました。
眼病ゆえに、手が目になり、人の愛に気づき、人が自分の手を握ってくれて、
それが嬉しくて涙が出、みんなが支えてくれるので孤独ではなくなり、
生きることが喜びになった。
大切な気づきがでてきたのは、この人に感謝の思いが満ちていたからです。
人は足りないものを数えて不満を思うものですが、
今与えられているもの数え、それに感謝しながら、
自分のできることで恩返ししていくことが大切に思います。
恩返しといえば、日本昔話に出てくる「つるの恩がえし」を思い出します。
猟師のわなにかかって苦しんでいるつるを助けたおじいさん。
そんな出来事を、その夜おばあさんと話していると、
かわいらしい娘さんが道に迷ったといって訪ねてきて、
行くあてもないというので、この家で暮らすことになった。
生活の糧にしてくださいと、自分の身体の羽をぬいて美しい織物を織ったのです。
その姿を見られた娘さんはつるになって、この家を飛び去っていったという話です。
助けてくれた恩返しに、自分の身体の羽を使って織物を織る。
それほど恩を返すというのは大変なことであるし、
助けてもらったことの感謝が深くなければできないことです。
そのために、恩に気づき、感謝し、お返しをしていく。
そんな生き方が尊いと思われます。
