ことわざ雑考(18)
泥中の蓮
今月は「東家に食し西家に宿す」についてお話しします。
{『ことわざ・名言辞典』(創元社)を参考}
意味は、「二つのよいことを一時に得ようとする」とあります。
これだけではよく分からないので、
『中国故事たとえ辞典』(細田三喜夫編 東京堂出版)で調べてみました。
そこにこんなことが書かれています。
どん欲な者が利を選ぶにつとめること、とあり、
次のような故事が書かれていました。
中国の春秋時代で斉(せい)という所に住む一人の女性のことです。
斉に、一人の女があった。
ふたつの家が、これを求めた。
その家の者が、その女に語って言った。
「東の家を望むならば、左の肩を脱ぎなさい。
西の家を望むならば右の肩を脱ぎなさい」
その女は、両方の肩を脱いだ。
父母がそのわけを問うた。
女は答えて、言った。
「東の家で食べて、西の家で寝たいわ。
東の家は金持ちだが、ぶ男で、西の家はいい男だけれど、貧乏ですもの」
(『中国故事たとえ辞典』 細田三喜夫編 東京堂出版)
こんな故事です。
金持ちと貧乏。ぶ男といい男。
その両者から、金持ちといい男を選ぶ女性です。
気持ちはわかりますが、欲深い人柄が見えてきます。
このことわざに似た「二兎追う者は一兎をも得ず」があります。
私の母は生前「欲かくと糞かく」と言っていました。
ことわざ辞典には載っていませんが、どこで聞いたのでしょう。
お釈迦様は
「たとえ貨幣の雨を降らすとも、欲望の満足されることはない」
と言っています。
イソップ物語に「ウマになりたいロバ」の話があります。
重い荷物を背負わされ、こき使われているロバが、
毎日美味しいものを食べて、小屋で飼われているウマを見てうらやましく、
「ウマに生まれたかった」と、自分の不運を嘆いていました。
しかし戦争が始まると、ウマは戦争に駆り出され、傷つき、
重症をおったウマもいました。
ウマはロバを見て、
「戦争に駆り出されない君がうらやましい」というのです。
それを聞いたロバは、もうウマをうらやましがることがなくなりました。
これもロバの欲といえるかもしれません。
あの人は幸せそうだが私はみじめだ。
そう思うことも欲深さからきているようです。
与えられた今ある自分に感謝しながら、
小さな幸せを大きくとらえていくと、幸せになれます。
