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仏事の心構え(144)

仏像の見方について 24 虚空蔵菩薩

今月は「虚空蔵菩薩」(こくぞうぼさつ)のお話を致します。

虚空蔵菩薩は、虚空が「宇宙」の意味を持ち、蔵は母胎の意味を持ちます。
「万物を育むとともに、調和をもたらす仏様」という意味です。

この菩薩には「蔵」という字が付いていますが、
同じこの蔵がついている菩薩様は、地蔵菩薩です。
大地を母胎のように包むという意味でした。この母胎が「蔵」です。

ですから虚空蔵菩薩は、虚空すなわち宇宙を母胎のように包むになります。
大地は万物を生みだします。その万物を虚空の働きで育てるわけです。
この両者の関係を陰と陽の徳で表すこともあります。

虚空蔵菩薩のお姿は、結跏趺坐して蓮台に座り、
髪を結っていて、宝冠をかぶっています。観音様に似ていますね。

この宝冠は五仏冠と呼ばれ、
五つの仏様(化仏・けぶつ・本像が化身した小さな仏様)が彫られています。
観音様とここに違うところです。

右手には剣をも持ち、その剣からは火焔(かえん)がでています。
光の焔(ほのう)といって光焔(こうえん)といいます。
左手に如意宝珠をのせた蓮華を持っています。この虚空蔵菩薩が一般的な姿です。

少し難しくなるのですが、「虚空蔵求聞持法(ぐもんじほう)」といって
偉大な記憶力、あるいは智慧を授けていただけるという修法があります。

その本尊が虚空蔵菩薩ですが、この場合の姿は少し違います。
満月の中で蓮華に坐して、左手に宝珠をのせた白い蓮を持っています。
右手は与願印(よがんいん)をとっています。
これは、さまざまな願いをかなえてくれる印です。

この修法を行い、弘法大師空海は、明星と一体となり、
日蓮はこの菩薩から「日本一の智者となれ」のメッセージを受け取ったといいます。
臨済宗の栄西も、この修法を若い頃行っていたようです。
不思議な力を与えてくれる、仏教の修行方法です。

私たち凡人には察することのできない、何か大きなはからい事があるのでしょう。