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ことわざ雑考(4)

えせ武士の刀いじり

今月のことわざは「えせ武士の刀いじり」です。
「ことわざ・名言辞典」(創元社)

えせ武士というのは、武士にあるまじき行いをするということ。
くだらない臆病武士にかぎって、何かというと、すぐに刀を振り回し、
人びとをおびやかす、という意味。

武道でも、少しその武(ぶ・武の道とはいわない)をかじった者が、
強くなったと思い、偉そうなことをいう。そんな場合にも、
このことわざはあてはまるかもしれません。

精神的には、傲慢であったり、おもい上がりの思いが出てしまって、
素直さや謙虚さが失われている精神状態ともいえます。

子育てを考えても、
互いが違った価値観で育った夫婦ですから、育て方も違ってきます。
「俺が働いているから、母親のあんたが子どもの面倒をみるのが当たりだ」
という考え方も、どうもこのことわざに当てはまるかもしれません。

謙虚に素直に、お互いの子育ての考えを理解し
相談し合いながらの子育てをしていくのが、
変な刀いじりをしない、方法でしょう。

暴力をふるったり、大きな声で怒鳴ったりするのは、刀いじりに似ています。

こんな詩があります。
小学校3年の男の子の詩でという題です。

「ねつがでた」

夜おそく体があついので めがさめた
三十八どあった
おばあちゃんはいそいで
れいぞうこからこおりをとり出して
こおりまくらを 頭の上にのせてくれた
ひゃっこくていい気持ち
お父さんはぼくのひたいに
つめたいタオルを のせてくれた
お母さんは くすりを こそこそさがしている
おばあちゃんが大きな声で おいのりをしている
お父さんのやさしい目が
じっとみているようだった
あんしんしてねむった

(『おひさまのかけら』川崎洋編・中央公論新社)

こんな詩です。

家族のあたたかな思いが伝わってきます。
ここには傲慢さもありません。あるのは素直に子どもを守る家族の姿です。
だから子どもも、とても安心するのです。

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